新たな時代「令和」がスタートして4ヶ月になります。
国内外の情勢は予断を許さぬ状況下にはありますが、それはさておき市井に暮らす人びとは、何ごとにつけても「令和初の」という語を冠し、兎にも角にも晴れやかな気分で日々を送っている昨今です。
私どもが子供のころ、お年寄りが「明治は遠くなりにけり」とよく口にしていましたが、いよいよ私も年寄りの部類に入りました。そして令和の時代を迎えた今、つい「昭和も遠くなりにけり」と口を衝いて出てきそうなこの頃でもあります。
さて、本年5月1日に今上天皇が即位されましたが、当日テレビに釘付けになった方も多くおられたことでしょう。
まだ記憶に新しいと思いますが、新天皇が一番最初に臨まれた儀式は何だったか覚えておられるでしょうか。
そう、「剣璽(けんじ)等継承の儀」です。
この「剣璽等継承の儀」は、桓武天皇の時代に定められた由緒ある儀式ですが、われわれ一般にはなんとも馴染みの薄いものであります。
それもそのはず。新天皇が即位された時にしか行われない儀式ですから、直近といっても平成の御代となる30年前になります。
また、その前となると大正から昭和に代わる107年前のことになりますから、当時の儀式を記憶に留めておられる方というのは、皆無に等しいと思われます。
それもまた、天皇陛下崩御という悲しみの中で行われる儀式なので、広く国民に知られていないのは当然のことでしょう。
しかし、このたびは生前退位という形の皇位継承でありました。剣璽等継承の儀も十分な事前準備のもとで執り行われたので、一般国民も喜びとともにつぶさに拝見することができました。
少し説明させていただきますと、「剣璽等継承の儀」とは、皇位の証である「三種の神器」を受け継ぐ儀式です。
三種の神器とは、皇位の標識として歴代の天皇が受け継いできたという三つの宝物。すなわち八咫鏡(やたのかがみ)・天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)・八尺瓊曲玉(やさかにのまがたま)です。
このうち天叢雲剣と八尺瓊曲玉を併せて「剣璽」と称されます。
この三種の神器の一つに「剣」があることに意を強くするものですが、つねづね私は、三種の神器に由来する剣道でありながら、そのことについて余り言及されないことが不思議でありました。
剣道の側がそのことを言い及ぶことは、差し出がましい、ということでしょうか。なんとなく釈然としない気持ちで年月を過ごしておりました。
ところが、このたび儀式の放映を見て私は、ハッと気がつくことがありました。
そもそも「三種の神器」そのものについて、われわれ剣道人のみならず国民おしなべて無関心を装っていた、ということです。それもある意図のもとに。
三種の神器というとき、多くの国民は神聖な存在として押し戴くのみで、まともに向き合ってこなかったような気がいたします。尊いものとして棚に上げる、というか巷の話題にも上りません。本来的には無関心でおれないはずのものですが…
それは何故でしょう。
昭和20年(1945年)、太平洋戦争における日本の敗戦は、日本古来の武道に壊滅的な打撃を与えました。特に剣道は、GHQ(連合国最高司令官総司令部)から国家主義、軍国主義に加担していたという理由で、警察や学校で全面禁止の制裁を受けるなど、一般社会においても剣道の活動は著しく制限を受けます。
そんな中、「剣」を包する「三種の神器」は七面倒臭い存在となってしまいました。
約7年間の空白期を置き、昭和27年(1952年)に「全日本剣道連盟」が設立されますが、あの時のGHQによる弾圧がトラウマとして日本人の心に棲み着いたことは紛れもない事実です。
また終戦直後、戦勝国から俄に天皇制廃止論が起こったことを知った国民は、皇室と剣の関連性が露わになることを恐れ、「三種の神器」を口の端に上らせることを極力慎んだものと推察されます。
ですから、本物の三種の神器とは真正面に向き合うことをよしとせず、その一方で昭和30年代には、庶民が備えておきたい高価で有用なものの代表を3つ上げて、テレビ・洗濯機・電気冷蔵庫を「三種の神器」と呼び、時の流行語としました。
また、その10年後には、カラーテレビ・クーラー・自動車を「新三種の神器」と讃え、現在に至ってはデジタル家電3種が挙げられたりしています。
このように、奥の院にあるものを茶化したかたちで現出させた、というのが裏の本質かも知れません。
ここで皆さんに知っていただきたいことは、新天皇はご幼少の頃、ナルちゃん時代に剣道を習っておられたということです。
「時事ドットコムニュース」(戦後生まれの初の天皇に 雅子さま支え、務め果たす)に下の写真とともに記事が載っています。
https://www.jiji.com/jc/v4?id=201905reiwastart0001
[剣道部の寒げいこに励まれる学習院初等科5年の新天皇陛下=1971年1月、東京都豊島区の学習院大学体育館【時事通信社】]
さあ皆さん、新しい令和の時代が幕開けした今、改めて剣と皇室との関わりに思いを致してみようではありませんか。
つづく