日本での稽古に思うこと
ギブソン・スチュワート
私は1999年にイギリスで剣道を始め、それから8年間、ほとんど毎日のように稽古をしてきました。しかし、日本で剣道をした経験は、日本へ旅行した時に友達が通っている道場でお世話になった程度です。そのため、日本で剣道をすることに対して、どうすればいいか分からず緊張していました。
2007年の夏、日本に移住してからすぐに、東京都中野区にある興武館という道場で稽古をすることができました。稽古は楽しくて、イギリスでやっていた内容と同じで安心しましたが、どこかで違和感を感じました。それが何かすぐには分かりませんでしたが、稽古を楽しみながらもイギリスと”何が違うのか?”、”何が同じか?”などを考えていました。現在もその道場で稽古をさせていただいています。
その後、現在所属している新宿区剣道連盟を紹介していただき、稽古に参加させていただいています。ここは八段の先生方から大学生までと幅広いレンジで、いい稽古ができる環境です。入った当時は、興武館と同じく、稽古に対して違和感を感じました。そして、稽古を続けていく中で、”動き”と”理合”が違うということに気づきました。日本の”動き”は、スムーズですばやく、”理合”はもっと複雑で論理的でした。私は今まで自分の身長(190cm)とスピードに任せて勝負をしてきました。ある程度までは試合に勝てましたが、すぐに簡単には勝てなくなりました。例えば、私の面打ちとトリッキーな技を相手にきづかれると殆ど負けてしまいます。これは私にとってスランプというより非常に衝撃的でした。これからは、日本の”動き”と”理合”を学び精進していくことで話将来のために自分の剣道を変えていかなければならなどと気付くことができました。
また、日本ではどのレベルの方でも地稽古だけでなく、基本稽古、試合を積極的にされています。私はそれを肌で感じ、これからは基本稽古、掛かり稽古などをもっと大事にしていきたいと思いました。その一方で、”形”や”礼儀”は外国人の方が大事にしているのではないかという印象をうけました。レベル的な問題ではなく、外国人の多くは大人になってから剣道を始めているのが理由かもしれませんが、例えば、日本で”形”をする時、少し早めに道場に行き、始まる前に”形”の稽古をする場合が多いです。しかし、外国の殆どでは、”形稽古”という特定の時間が設けられています。それだけ”形”が重んじられているのです。“礼儀”については、例えば、竹刀を跨いだり、稽古を待っている列に何も言わずに横入りする人も多く見られました。外国ではこの様なことをするととても怒られます。しかし、日本では何でもないように知らん顔をしていることが多いです。これはとても残念なことだと思いました。
今回、日本で剣道をすることで、さらに深く理解できるチャンスをもらえました。私は自分の剣道の方向性を正すことができ本当に嬉しく思っています。例えば、攻め方や打ち方などだけに限らず細かいところまで気をつけるようになりました。竹刀の握り方や、手の位置、稽古や勝負中の考え方、その気づきのおかげで今でも積極的に見直そうとしています。これは、私の日本語力では言い表せないくらいとても感謝しています。
これからも一生懸命稽古に取り組み精進していきたいと思います。
最後に、私は日本と外国の交流をより深め、お互いの良いところや直すべきところを話し合っていくべきではないかと考えています。トップレベルの先生方、外国に派遣される先生方、国の代表の方々だけではなく幅広いレベルの視点で、日本人から数多くのことを学び、また反対に外国人がなぜ形の稽古や剣道の文化を大事にしているかなどを話し合えば、お互いにより剣道を深めることができるのではないでしょうか。
剣道は一つ、皆が幸せに稽古ができることを願っています。
※1980年5月生まれ(33歳)
シスコシステムズ合同会社勤務
1999年にオックスフォード大学剣道クラブで剣道を始める。
イギリス代表として世界剣道選手権大会、第12回大会から第15回大会まで4回出場(優秀選手賞3回受賞)
剣道五段