第9回 みちしるべ 第1回アジア・オセアニア剣道選手権大会を開催して

『剣窓』令和8年(2026)8月号

第9回 みちしるべ

第1回アジア・オセアニア剣道選手権大会を開催して

 アジア・オセアニア地域の剣道の普及拡大と組織化は長年の課題でありましたが、昨年(2026年)12月、ついに「アジア・オセアニア剣道連盟(AOKF)」が設立され、このたび東京都足立区の「東京武道館」において23カ国・地域から約300名の選手の参加を得て「第1回アジア・オセアニア剣道選手権大会(1AOKC)」が開催されました。詳細は本誌、本年7月号3~8頁に掲載。

 

AOKFの設立             

 国際剣道連盟(FIK)は1970年(昭和45)に設立され、同時に第1回世界剣道選手権大会(1WKC)が開催されました。56年前のことです。WKCは3年に1回開催されますが、来年5月にはその第20回目となる大会(20WKC)が日本・東京で開催されます。

 このたびAOKFが設立された背景のひとつに、国際スポーツ組織の環境変化があります。海外の国々では、剣道そのもの知名度は高くなく、何らかのかたちで公認の国際競技団体に名を連ねていなければ、スポーツ施設の使用や財政的援助を受けることができません。                                                   

 現在FIKは、国際オリンピック委員会(IOC)公認の国際競技連盟ではありませんが、AIMSという非オリンピック競技の国際競技連盟をまとめる団体に加盟しております。AIMSはIOCと覚書を締結し、IOCから正式に認知されています。そういう意味でAIMSは、海外の国々において剣道の活動を行う上で重要な役割を果たしているのです。

 ところが近年、AIMSの会員資格の厳格化が進み、「今後は3つ以上の大陸連盟をもつことが条件となる」との通告を受けました。目下、FIK傘下にある大陸連盟としては「ヨーロッパ剣道連盟」のみしか存在していません。アメリカ大陸には、ラテンアメリカ剣道連盟が存在しますが、大陸連盟として認められるには不完全で、南北を統一した連盟を設立する必要があります。近々、全アメリカ大陸の連盟が設立される運びとなっており、そうなれば3大陸というAIMSの条件を満たすことになります。詳細は本誌、本年1月号3頁に掲載。

 

三段以下の個人戦を実施

 WKCにおいては男女個人戦と団体戦を実施していますが、団体決勝戦での日本vs韓国、また個人戦でも日本と韓国が上位を占有する状況にあります。アジア・オセアニア地域内の剣道においては愛好者数の面でも技量的にも大きな開きがあります。

 そこで創案されたのが男女三段以下の個人戦です。また、これを実施するにあたっては、もうひと工夫が加えられました。それは、三段以下の個人戦には日本と韓国の選手は出場しないというものです。日本と韓国でアジア・オセアニアの剣士を育てようというコンセプトといえましょうか。主に日本と韓国の審判員を起用し、また日韓の選手団が他のアジア・オセアニア選手の試合を見まもる、いわば日韓「対抗」から「協力」への転換であります。

 選手の技量は、まだまだ国際レベルにはないものの、切磋琢磨する対戦の光景を観るかぎり、このたび1AOKCにおいては三段以下の個人戦の試みは功を奏したと評価できます。

 

二刀選手が多数登場

 1AOKCで特筆すべきは、二刀の選手が多数出場したことです。わが国においても二刀をつかう剣士は存在しますし、二刀の八段受有者も複数名います。しかし、実際に大会等で二刀をつかう剣士は珍しい存在です。

 このたびのAOKCでは二刀の選手が12名(男子9名、女子3名)出場しました。その内訳は、香港(男子2名、女子1名)、シンガポール(男子1名)、カザフスタン(男子1名)、オーストラリア(男子1名)、トルコ(男子1名)、中国(男子2名、女子2名)マカオ(男子1名)です。わたしには一つの大会で12名もの二刀の選手が出場すること自体が異様に映りました。これは今回かぎりのものなのか、今後も増え続けるものか、予断は許せません。この二刀に関しては紙幅の都合上、次回に述べさせていただきます。

 

1AOKCを終え

 とにもかくにも1AOKCは盛況のうちに執り行われ、大成功を収めたといってよいでしょう。今日の世界情勢は、中東の緊張、大国間の対立、経済の不安定化など、複数の危機が同時進行しており、いっときの気の休まる間もない状態にあります。しかし、このような時世にあればこそ、このAOKCが「交剣知愛」の輪を広げる場となり、地球の片隅からではありますが、世界平和に向けた一つの発信になればと願うものです。

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